AI判定ツールは信用できる?!自社コンテンツを保護するためにできること

AI(人工知能)は今やコンテンツ作成の分野にも進出しています。ライティング、画像、音楽、動画など、AIが作り出すコンテンツは、人間の目を欺くほど自然なものです。しかし、AIによって生成されたコンテンツは、著作権の侵害やコンテンツの品質低下のリスクをもたらす場合があることも事実です。

こうした問題に対処するため、AIが生成したコンテンツを見分けるためのAI判定ツール(AIコンテンツ検出ツール)が開発されました。これらのツールは、コンテンツ中にAIが関与した痕跡を見つけ出し、その可能性を示しします。

しかし、AI判定ツールは本当に信頼できるものなのでしょうか?

この記事では、AI判定ツールの信頼性や適切な使用方法について解説します。これらを理解することで、コンテンツを発信・管理する側として、より質の高いコンテンツ作成や、効果的なデジタルマーケティング戦略を立てることが可能になります。


AIとコンテンツ作成の関係

まずは、AIとコンテンツ作成の関係について考察していきましょう。
コンテンツ作成におけるAIと人間の違いは何でしょうか?また、AIが生成するコンテンツはSEOにどのような影響を及ぼすのでしょうか?

AIが生成するコンテンツと人間が作るコンテンツの違い

AIが生成するコンテンツには、人間が作成するものとは異なる「特徴」があります。
コンテンツ作成におけるAIと人間の違いは、主に以下の3つです。

■創造性:AIは学習したデータを基に新しいコンテンツを生成する能力を持っていますが、その創造性は人間のそれには及びません。人間は、個人の経験や感情、知識、思考などを反映したオリジナルなコンテンツを作成できます。

■正確性:AIが生成するコンテンツの正確性は、データの品質や量、アルゴリズムの性能などによります。データに誤りや偏りがあると、AIはそれをそのまま学習し、不正確なコンテンツを生成する可能性があります。一方、人間は自らの知識や判断力を用いて、事実に基づいたコンテンツを作成することができます。

■倫理性:AIが生成したコンテンツは、元のデータセットの著作権を侵害する可能性があります。また、個人のプライバシーや人権などを損なうコンテンツを生成する可能性もあります。

このように、AIが生成するコンテンツと人間が作成するコンテンツは、それぞれ独自の利点と制限があります。AIは大量のデータを処理し、迅速にコンテンツを生成する能力を持っていますが、その創造性や倫理性は人間に及びません。一方、人間は個々の経験や感情を反映したオリジナルのコンテンツを作成し、その正確性を保証する能力を持っています。

しかし、DeNAのWELQ騒動のように、人間が書いたからといって「正確性」や「倫理性」が保証されるわけではありません。
WELQ騒動では外部ライターが他のサイトからの無断転載や剽窃(ひょうせつ)などで不正な記事を大量に生成していたことが発覚。この騒動は、コンテンツの品質や信頼性に対するユーザーのニーズを高めたとともに、Googleの検索アルゴリズムにも変化をもたらしました。

この騒動を機にGoogleは、YMYLコンテンツ(Your Money or Your Life:お金や人生に関わる重要な情報を扱うページ)に対して、品質と正確性を重視する方針を打ち出したのです。

次の章では、AIが生成したコンテンツがSEOに与える影響について、Googleの公式見解をもとに解説していきます。

▼「AIが生成するコンテンツ」に関してより詳しく知りたい方はこちらの記事が参考になります。
ChatGPTの実録第3弾|事例からみる生成AIが作成したコンテンツの問題に迫る⑤

AIが生成したコンテンツはSEOに影響を与えるか?

コンテンツ制作者やオウンドメディア運営者にとって、AIを利用したコンテンツがSEO(検索エンジン最適化)にどのような影響を与えるのかは、非常に重要な問題です。
AIが生成するコンテンツは、SEOにとってプラスになるのでしょうか?それともマイナスになるのでしょうか?

Googleは「AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス」を公開しており、その中で、コンテンツがどのように制作されたかではなくその品質に重点を置くとしています。つまり、AIを利用しても、ユーザーにとって有益で理解しやすいコンテンツであれば、SEOにおいて有利になるということです。
実際に、Expedia(エクスペディア)やAirbnb(エアビー)など、AIを利用したコンテンツでSEOの効果を上げている事例もあります。

しかし、Googleはまた、検索結果のランキング操作を主な目的として、コンテンツ生成にAIを利用することは、スパムに関するポリシーに違反すると明言しています。AIを利用してスパム目的でコンテンツを自動生成するなど、ユーザーにとって価値のないあるいは情報価値が低いコンテンツは、SEOにおいて不利になるということです。Googleの判断によっては、検索対象から除外されることもあります。

つまり、AIを利用するかどうかに関わらず、コンテンツは読者や視聴者にとって有用で役に立ち、独創的で、E-A-T(専門性、権威性、信頼性)の側面を満たす質の高いコンテンツを作成することが重要ということです。
E-A-Tの高いコンテンツは、検索結果の上位に表示されやすく、ビジネスや社会にも良い影響を与えることができます。

参考:Google「AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス」

▼「コンテンツSEO」に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事が参考になります。
コンテンツSEOって何?メリットと作業手順を徹底解説!

AI判定ツールの信頼性

AI判定ツールとは、コンテンツがAIによって生成されたものかどうかを判断するツールのことです。コンテンツ記事の場合は、文法や語彙、文体などの特徴を分析し、AIによく見られるパターンや矛盾を検出することで、コンテンツの出所を推測します。

しかし、AI判定ツールは、完全に信頼できるものではありません。ChatGPTの開発者であるOpenAIは、AIが生成したテキストを検出するためのツールも開発していますが、その信頼性については完全ではないと述べています。具体的には、OpenAIのツールは、AIが生成したテキストの26%しか正確に識別できず、人間が書いたテキストをAIが生成したものと誤って判断する可能性も9%あると言っています。

参考:OpenAI「New AI classifier for indicating AI-written text」

AI判定ツールを実際に使用した結果

ここで、実際にAI判定ツールを使って、その信頼性を検証していきます。
使用したツールはCopyleaksです。

Copyleaks
Copyleaksは、Web上で使えるAIコンテンツ検出ツールです。ChatGPTなどAIが生成したコンテンツを幅広く無料で検出できます。

今回はsambushiに掲載している記事をいくつか判定しました。
なお、使用したsambushi記事は、2022年のChatGPTが公開される以前に作成・公開された記事です。

判定元の記事(2020年7月作成&公開):sambushi「成功事例から学ぶ!オウンドメディア運用のコツとは」

判定元の記事(2020年8月作成&公開):sambushi「【コミュニケーションツール9選】外注先との連絡を効率化!」

判定元の記事(2020年9月作成&公開):sambushi「SNSマーケティングとは?得られる効果や注意点を解説」

これらの記事は全て「AI判定」でした。前述の通り、これらは全て人間が作成したものです。つまり、Copyleaksの判定は誤っていました。

※以上、Copyleaks使用(収録日:2024年2月)

AI判定ツールの限界

上記の実証実験からもわかるように、AI判定ツールは、現段階では完全に正確な判定を行うことができません。AIが生成したテキストを「人間によって書かれた」、人間が作成したテキストを「AIよって生成された」と誤判定することがあります。
イラストや画像についても同じで、人間が描いた非AIの作品がAI作品と誤判定されることがあります。

また、AI判定ツールには、そのコンテンツが著作権を侵害しているかどうかを判断する能力はありません。AIによって生成されたコンテンツが著作権を侵害しているかどうかは、既存の著作物との類似性や依拠性などを総合的に判断する必要があります。著作権の問題に対しては、AI判定ツールではなく、人間の判断が必要です。

コンテンツ管理者やオウンドメディア運営者は、これらAI判定ツールの限界を理解し、適切に利用することが重要です。

AI判定ツールの注意点

AI判定ツールをどのように適切に使用するか(しないか)について、以下のようなポイントに注意していきましょう。

判定結果に頼りすぎない

AI判定ツールは、コンテンツの出所を100%特定するものではありません。現段階では完全に正確な判定を行うことはできず、誤判定がされています。AI判定ツールの結果は、参考程度にとどめるべきです。ツールの限界を理解し、他の調査手段・判断手段と併用することが重要です。

例えば、コンテンツの出典や引用元を確認する、コンテンツ制作者や発行元の信頼性を調べる、コンテンツの内容や品質を自分で評価するなどの方法があります。

著作権の問題を考慮する

AI判定ツールは、コンテンツの著作権を保護するものではありません。AI判定ツールは、そのコンテンツが著作権を侵害しているかどうかを判断することはできません。AI判定ツールを使用することで、コンテンツの著作権を無視することはできません。

AI生成、非AI生成に関係なく、コンテンツが著作権を侵害しているかどうかは、既存の著作物との類似性や依拠性などを総合的に判断する必要があります。コンテンツの著作権に関する知識や法律をきちんと理解し、適切に対処することが重要です。

コンテンツの価値を見極める

AI判定ツールは、コンテンツの品質を保証するものではありません。AI判定ツールは、コンテンツがAIによって生成されたものかどうかを推測するだけで、そのコンテンツがユーザーにとって有用で役に立つ質の高いものかどうかを判断することはできません。

コンテンツの品質は、コンテンツの目的やターゲットに応じて変わります。コンテンツの品質は自分で評価することが重要です。

自社コンテンツがAI作品だと思われないために

AIによって生成されたコンテンツは、人間の感覚や価値観と異なるため、自社コンテンツの品質や信頼性が低くなる恐れがあります。
AIによって生成されたコンテンツは、人間の創作意欲や表現の自由を奪う可能性があるため、自社コンテンツの創造性や魅力が失われる可能性があります。

さまざまな理由で、自社コンテンツがAIによって生成されたコンテンツと混同されたくないと考えるコンテンツ管理者やオウンドメディア運営者は多いでしょう。

自社コンテンツは、自社のターゲットやニーズに応えるためのものであり、自社のブランドやコンセプトを表現するものです。そこで、最後に、自社コンテンツがAIによって生成されたコンテンツと混同されないためにないためのポイントを紹介します。
AIが生成するコンテンツにはない「人間ならでは作品の特徴」を持たせていきましょう!

個性を出す

自社コンテンツがAI作品だと思われないためには、自社のブランドやコンセプト、ターゲットに合った個性を出すことが重要です。独自のトーンや視点、主張など個性を出すことで、他社コンテンツとの差別化ができます。また、自社のコンテンツに信頼感や親近感を持たせることにもつながります。

例えば、自社のブランドが「若者向けのカジュアルなファッションブランド」であれば、自社のコンテンツは「若者の話題や流行に敏感で、軽快で親しみやすい文体、明るく楽しいトーン、自分らしさを大切にする視点や主張」などの要素を持たせると良いでしょう。

AIは、若者の話題や流行を調べることはできても、それに感情や個性を追加した視点や主張を生成することはできません。

感情的な要素を含める

自社コンテンツがAI作品だと思われないためには、自社コンテンツに感情的な要素を含めることが重要です。コンテンツに感情や感覚、感動や感激などの要素を含めることで、自社のコンテンツが活き活きし、ユーザーに共感を与えることができます。

例えば、自社製品やサービスを紹介するコンテンツであれば、実際に利用した顧客の体験談や感想を引用しながら、企業サイドからの感想や意見を含めると良いでしょう。

AIは、指示されたとおりに顧客の体験談や感想を引用することはできても、それらに対する感情や感覚を反映させることはできません。

ユーザーとの関係を築く

自社コンテンツがAI作品だと思われないためには、自社コンテンツとユーザーとの関係を深めることが重要です。ユーザーとの関係性を築くことで、自社のコンテンツがユーザーにとって価値あるものとなり、ユーザーの信頼や忠誠心を得ることができます。

例えば、自社のコンテンツにユーザーの声を取り入れることで、ユーザーとのコミュニケーションを促進し、ユーザーのニーズや期待に応えることができます。また、ユーザーからのフィードバックを活用してコンテンツを改善することで、ユーザーとの関係を強化し、自社のコンテンツの品質を高めることができます。

AIはユーザーの声を収集し、それを基にコンテンツを生成することはできますが、ユーザーとの対話や共感を生み出し、ユーザーとの関係を築くことはできません。ユーザーとの関係を築くためには、人間の感覚や価値観、経験を活用する必要があります。

まとめ

AI判定ツールを使うこと自体は悪くありません。しかし、その結果を盲信するのは危険です。
コンテンツ管理者やオウンドメディア運営者は、AI判定ツールの限界や注意点を理解し、自分でコンテンツの出所や品質、著作権を判断することが大切です。

また、AIと人間が作成するコンテンツの違いやSEOへの影響についても理解しておくべきです。コンテンツ作成にAIを利用するかどうかに関係なく、ユーザーにとって価値のある質の高いコンテンツを作成することが重要です。

AIを無視することはできません。AIの限界や注意点を理解し、それとうまく付き合うことで、より質の高いコンテンツ作成と効果的なデジタルマーケティング戦略を実現できるのです。

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